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無精子症の種類と見分け方を解説!閉塞性と非閉塞性の違いとは?

妊活における無精子症の原因と影響

妊活を始めたカップルにとって、不妊の原因が男性側にあることはショックなことかもしれません。特に、精液中に精子がまったくいない状態である「無精子症」は、自然妊娠の可能性がほぼないと言われています。

しかし、無精子症と診断されても諦める必要はありません。無精子症の原因や影響、診断方法や治療法について知れば、妊娠への希望を持つことができます。

この記事では、無精子症について以下の内容を解説します。

  • 無精子症の原因と影響
  • 無精子症の診断方法と検査項目
  • 閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症の特徴と原因
  • 閉塞性無精子症の治療法と成功率
  • 非閉塞性無精子症の治療法と成功率
  • 無精子症の予防と対策

この記事を読むことで、無精子症に関する正しい知識を得られるだけでなく、自分に合った治療法を選択するための参考にもなります。妊活中の男性はもちろん、パートナーの女性もぜひ読んでみてください。

無精子症の原因と影響

無精子症とは、射精された精液中に精子がまったくいない状態のことです1。一般男性の100人に1人は無精子症であると言われており2、その割合は決して少なくありません。

無精子症の原因は、大きく分けて以下の2つに分類されます3

  • 閉塞性無精子症:精巣で正常に造られた精子が、通り道である精管が詰まっているなどの理由で出てこられない場合
  • 非閉塞性無精子症:通り道に問題はないが、何らかの原因で精巣で十分な量や質の精子が造られない場合

閉塞性無精子症は、先天的な要因や外傷・手術・感染などの後天的な要因が原因で起こります4。非閉塞性無精子症は、染色体異常や遺伝的な要因が多く、その他にもホルモン異常や生活習慣・ストレス・加齢などが影響する可能性があります。

無精子症は、自然妊娠することがほぼ不可能であること以外にも、男性自身の健康や心理にも影響を及ぼす可能性があります。例えば、非閉塞性無精子症では染色体異常やホルモン異常が関係している場合が多く、それらは男性特有の癌や骨粗しょう症などのリスクを高めることがあります。また、無精子症と診断されたことで、男性は自分の男性性や自尊心を傷つけられたと感じたり、パートナーとの関係にストレスを感じたりすることもあります。

無精子症は、妊活において大きな障害となるだけでなく、男性の健康や心理にも悪影響を与える可能性があることを知っておきましょう。

無精子症の診断方法と検査項目

無精子症は、精液中に精子がいるかどうかを確認することで診断されます。そのため、基本的には 精液検査 が必要です。

精液検査では、以下の項目が調べられます。

  • 精液量:射精時に出る精液の量
  • 精子濃度:1mlあたりの精子の数
  • 精子運動率:動いている精子の割合
  • 精子形態:正常な形をした精子の割合
  • pH:精液の酸性度・アルカリ度
  • 粘度:精液の固さ・水っぽさ

これらの項目は、世界保健機関(WHO)が定めた基準値と比較され、正常か異常かが判断されます。無精子症は、 2回以上連続して行った精液検査で、精子が一匹も見つからなかった場合 に診断されます。

また、無精子症の原因を特定するために、以下のような検査も行われることがあります。

  • 血液検査:ホルモン値や染色体異常などを調べる
  • 精巣超音波検査:精巣や精管の形や大きさを調べる
  • 精管造影検査:造影剤を注入して精管の通り道を調べる

これらの検査は、無精子症が閉塞性か非閉塞性かを判断するためにも重要です。閉塞性無精子症では、血液中のホルモン値は正常であることが多く、超音波検査や造影検査で閉塞部位が特定できる場合があります。非閉塞性無精子症では、血液中のホルモン値が低下していることが多く、染色体異常や遺伝的な要因が関係している場合もあります。

無精子症は、自分では気づきにくいこともあります。妊活中の男性はもちろん、将来的に赤ちゃんが欲しい男性も、一度は不妊検査を受けて自分の精子の状態をチェックすることをおすすめします。

 

閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症の特徴と原因

無精子症は、精巣で造られた精子が精液中に出てこないことで起こりますが、その原因によって閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症に分けられます。それぞれの特徴と原因について見ていきましょう。

閉塞性無精子症

閉塞性無精子症とは、精巣で正常に造られた精子が、通り道である精管が詰まっているなどの理由で出てこられない場合のことです。閉塞性無精子症は、無精子症の約4割を占めると言われています。

閉塞性無精子症の原因は、以下のようなものがあります。

  • 先天的な要因:生まれつき精管が欠損している場合や、先天性尿道下裂などの先天性疾患がある場合
  • 外傷・手術:睾丸や陰嚢に受けた外傷や、前立腺や膀胱などの手術によって精管が損傷された場合
  • 感染:淋菌やクラミジアなどの性感染症や、尿路感染症などによって精管が炎症を起こした場合
  • 免疫反応:自分の精子に対して抗体を作ってしまうことで、精管内で粘着性の高い物質が生成されて詰まりを起こした場合

閉塞性無精子症では、通り道に問題があるだけで、精巣では正常に精子が造られています。そのため、血液中のホルモン値は正常であることが多く、超音波検査や造影検査で閉塞部位が特定できる場合があります。

非閉塞性無精子症

非閉塞性無精子症とは、通り道に問題はないが、何らかの原因で精巣で十分な量や質の精子が造られない場合のことです。非閉塞性無精子症は、無精子症の約6割を占めると言われています。

非閉塞性無精子症の原因は、以下のようなものがあります。

  • 染色体異常:クラインフェルター症候群やヤ染色体微小欠失などの染色体異常がある場合
  • 遺伝的な要因:遺伝性不妊や先天性不全性腺刺激ホルモン欠乏症などの遺伝的な要因がある場合
  • ホルモン異常:下垂体や視床下部などの脳下垂体系や、甲状腺や副腎などの内分泌系に異常がある場合
  • 生活習慣・ストレス:喫煙・飲酒・過度な運動・肥満・栄養不足・睡眠不足・ストレスなどが精子の生成に悪影響を与える場合
  • 加齢:年齢とともに精子の生成能力が低下する場合
  • 薬物・放射線:抗がん剤やステロイドなどの薬物や、放射線治療などによって精巣が障害を受ける場合

非閉塞性無精子症では、精巣で十分な量や質の精子が造られないため、血液中のホルモン値が低下していることが多く、染色体異常や遺伝的な要因が関係している場合もあります。

無精子症は、閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症に分けられ、それぞれに異なる原因があります。原因によって治療法や成功率も変わってきますので、次の項で詳しく見ていきましょう。

 

閉塞性無精子症の治療法と成功率

閉塞性無精子症では、通り道に問題があるだけで、精巣では正常に精子が造られています。そのため、閉塞性無精子症の治療法は、大きく分けて以下の2つに分類されます。

  • 精管再建術:精管の詰まりや欠損を手術で修復する方法
  • 精巣細胞採取法:精巣から直接精子を採取して体外受精する方法

それぞれの治療法の特徴と成功率について見ていきましょう。

精管再建術

精管再建術とは、精管の詰まりや欠損を手術で修復する方法です。閉塞性無精子症の原因が外傷や手術などの後天的な要因である場合に適用されます。

精管再建術には、以下のような種類があります。

  • 精管吻合術:詰まった部分を切除して、両端をつなぎ合わせる方法
  • 精嚢吻合術:詰まった部分を切除して、精管と精嚢(せいのう)をつなぎ合わせる方法
  • 精巣上体吻合術:詰まった部分を切除して、精管と精巣上体(せいそうじょうたい)をつなぎ合わせる方法

これらの手術は、一般的に 顕微鏡下で行われる ことが多く、 約2~3時間 かかります。手術後は 約1週間程度 の入院が必要です。また、手術後は 約3ヶ月程度 かけて自然妊娠を試みることができます。

精管再建術の成功率は、以下のような要因によって変わってきます。

  • 手術の種類:一般的には、 精管吻合術 > 精嚢吻合術 > 精巣上体吻合術 の順に成功率が高いと言われています。
  • 手術の難易度:一般的には、 閉塞部位が近いほど > 遠いほど閉塞期間が短いほど > 長いほど閉塞原因が外傷や手術などの後天的な要因であるほど > 先天的な要因であるほど 、成功率が高いと言われています。
  • 手術者の技量:一般的には、 経験豊富な専門医によるほど > そうでないほど 、成功率が高いと言われています。

精管再建術の成功率は、手術後に精液中に精子が出現する割合と自然妊娠する割合という2つの指標で測られます。一般的には、 精子出現率は50~90%自然妊娠率は30~70% と言われています。

精管再建術は、閉塞性無精子症の治療法の中で最も自然に近い方法です。手術に成功すれば、自然妊娠の可能性が高まります。しかし、手術にはリスクや費用もかかりますし、成功率も保証されません。そのため、手術を受けるかどうかは、医師とよく相談して決める必要があります。

精巣細胞採取法

精巣細胞採取法とは、精巣から直接精子を採取して体外受精する方法です。閉塞性無精子症の原因が先天的な要因である場合や、精管再建術に失敗した場合に適用されます。

精巣細胞採取法には、以下のような種類があります。

  • 精巣生検:針で精巣から組織を採取する方法
  • 精巣摘出:小さな切開をして精巣から組織を採取する方法
  • 精巣上体穿刺:針で精巣上体から液体を採取する方法

これらの方法は、一般的に 局所麻酔下で行われる ことが多く、 約15~30分 かかります。手術後は 即日退院 できます。また、手術後は 体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI) という高度な生殖補助医療(ART)を受けることになります。

精巣細胞採取法の成功率は、以下のような要因によって変わってきます。

  • 採取方法:一般的には、 精巣摘出 > 精巣生検 > 精巣上体穿刺 の順に成功率が高いと言われています。
  • 採取部位:一般的には、 精巣の後方 > 前方 のほうが成功率が高いと言われています。
  • 採取時期:一般的には、 排卵日前後 > 排卵日以外 のほうが成功率が高いと言われています。
  • 採取者の技量:一般的には、 経験豊富な専門医によるほど > そうでないほど 、成功率が高いと言われています。

精巣細胞採取法の成功率は、採取した精子を使って体外受精や顕微授精を行った際の妊娠率や出産率という指標で測られます。一般的には、 妊娠率は20~40%出産率は10~20% と言われています。

精巣細胞採取法は、閉塞性無精子症の治療法の中で最も確実な方法です。手術によって精子を採取できれば、体外受精や顕微授精で妊娠の可能性があります。しかし、手術やARTにはリスクや費用もかかりますし、成功率も保証されません。そのため、手術を受けるかどうかは、医師とよく相談して決める必要があります。

 

非閉塞性無精子症の治療法と成功率

非閉塞性無精子症では、通り道に問題はないが、何らかの原因で精巣で十分な量や質の精子が造られないため、自然妊娠することはほぼ不可能です。そのため、非閉塞性無精子症の治療法は、大きく分けて以下の2つに分類されます。

  • 薬物療法:ホルモン補充や漢方薬などを服用して、精子の生成を促す方法
  • 精巣細胞採取法:精巣から直接精子を採取して体外受精する方法

それぞれの治療法の特徴と成功率について見ていきましょう。

薬物療法

薬物療法とは、ホルモン補充や漢方薬などを服用して、精子の生成を促す方法です。非閉塞性無精子症の原因がホルモン異常や生活習慣・ストレスなどである場合に適用されます。

薬物療法には、以下のような種類があります。

  • ホルモン補充:下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)などを注射や経口摂取する方法
  • 漢方薬:生殖機能を高めるとされる漢方薬を服用する方法
  • その他:抗酸化物質やビタミンなどを含むサプリメントを服用する方法

これらの方法は、一般的に 数ヶ月から数年 かけて行われます。また、治療中は 定期的に血液検査や精液検査 を受ける必要があります。

薬物療法の成功率は、以下のような要因によって変わってきます。

  • 原因の種類:一般的には、 ホルモン異常 > 生活習慣・ストレス > 染色体異常・遺伝的要因 の順に成功率が高いと言われています。
  • 原因の程度:一般的には、 軽度 > 中度 > 重度 の順に成功率が高いと言われています。
  • 薬物の種類:一般的には、 ホルモン補充 > 漢方薬 > その他 の順に成功率が高いと言われています。
  • 薬物の量・期間:一般的には、 適切な量・期間 > 不適切な量・期間 のほうが成功率が高いと言われています。

薬物療法の成功率は、治療後に精液中に精子が出現する割合と自然妊娠する割合という2つの指標で測られます。一般的には、 精子出現率は10~30%自然妊娠率は5~10% と言われています。

薬物療法は、非閉塞性無精子症の治療法の中で最も安全で安価な方法です。しかし、治療には時間がかかりますし、成功率も低いと言われています。そのため、薬物療法を選択する場合は、忍耐力と希望を持って続けることが大切です。

精巣細胞採取法

精巣細胞採取法とは、精巣から直接精子を採取して体外受精する方法です。非閉塞性無精子症の原因が染色体異常や遺伝的な要因である場合や、薬物療法に失敗した場合に適用されます。

精巣細胞採取法には、以下のような種類があります。

  • 精巣生検:針で精巣から組織を採取する方法
  • 精巣摘出:小さな切開をして精巣から組織を採取する方法
  • 精巣上体穿刺:針で精巣上体から液体を採取する方法

これらの方法は、一般的に 局所麻酔下で行われる ことが多く、 約15~30分 かかります。手術後は 即日退院 できます。また、手術後は 体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI) という高度な生殖補助医療(ART)を受けることになります。

精巣細胞採取法の成功率は、以下のような要因によって変わってきます。

  • 採取方法:一般的には、 精巣摘出 > 精巣生検 > 精巣上体穿刺 の順に成功率が高いと言われています。
  • 採取部位:一般的には、 精巣の後方 > 前方 のほうが成功率が高いと言われています。
  • 採取時期:一般的には、 排卵日前後 > 排卵日以外 のほうが成功率が高いと言われています。
  • 採取者の技量:一般的には、 経験豊富な専門医によるほど > そうでないほど 、成功率が高いと言われています。

精巣細胞採取法の成功率は、採取した精子を使って体外受精や顕微授精を行った際の妊娠率や出産率という指標で測られます。一般的には、 妊娠率は20~40%出産率は10~20% と言われています。

精巣細胞採取法は、非閉塞性無精子症の治療法の中で最も確実な方法です。手術によって精子を採取できれば、体外受精や顕微授精で妊娠の可能性があります。しかし、手術やARTにはリスクや費用もかかりますし、成功率も保証されません。そのため、手術を受けるかどうかは、医師とよく相談して決める必要があります。

 

無精子症の予防と対策

無精子症は、先天的な要因や不可抗力な要因によって起こる場合もありますが、一部の場合は予防や対策が可能です。無精子症にならないためには、以下のようなことに注意しましょう。

  • 生活習慣の改善:喫煙・飲酒・過度な運動・肥満・栄養不足・睡眠不足などは、精子の生成に悪影響を与える可能性があります。そのため、これらの生活習慣を改善することで、無精子症の予防につながることがあります。
  • ストレスの軽減:ストレスは、ホルモンバランスを乱すことで、精子の生成に悪影響を与える可能性があります。そのため、ストレスを軽減する方法を見つけることで、無精子症の予防につながることがあります。
  • 陰部の冷却:陰部は、体温よりも低い温度であることが望ましいと言われています。高温になると、精子の生成に悪影響を与える可能性があります。そのため、タイトな下着や長時間の入浴・サウナ・パソコン使用などを避けることで、無精子症の予防につながることがあります。
  • 外傷・感染の予防:睾丸や陰嚢に受けた外傷や、淋菌やクラミジアなどの性感染症や尿路感染症などは、閉塞性無精子症の原因になる可能性があります。そのため、外傷や感染を予防することで、無精子症の予防につながることがあります。

無精子症は、予防や対策ができる場合もあることを知っておきましょう。妊活中の男性はもちろん、将来的に赤ちゃんが欲しい男性も、自分の生殖機能を守るために、上記のことに気を付けてみてください。

まとめ

この記事では、無精子症について以下の内容を解説しました。

  • 無精子症の原因と影響
  • 無精子症の診断方法と検査項目
  • 閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症の特徴と原因
  • 閉塞性無精子症の治療法と成功率
  • 非閉塞性無精子症の治療法と成功率
  • 無精子症の予防と対策

無精子症は、妊活において大きな障害となるだけでなく、男性自身の健康や心理にも影響を及ぼす可能性があることを知っておきましょう。しかし、無精子症と診断されても諦める必要はありません。無精子症の原因や影響、診断方法や治療法について知れば、妊娠への希望を持つことができます。

この記事が、無精子症に関する正しい知識を得るだけでなく、夫婦に合った治療法を選択するための参考になれば幸いです。